日本小児外科学会
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小児外科で治療する病気

神経芽腫

概念
腎臓の上にある副腎や,頸から骨盤までの脊椎の両側にある 交感神経節 から発生する腫瘍で,小児にできる固形悪性腫瘍(固まりを作るがん)の中では脳腫瘍の次に発生頻度の高い腫瘍です.悪性腫瘍ですが,自然に消失したり化学療法によって成熟して良性腫瘍に変化したりすることもあり,同じ神経芽腫であってもその性状はそれぞれ大きく異なっています.

発生頻度と部位
年間発生頻度は,米国で500人以上,日本では200人以上と考えられています.小児全体としては,米国15歳以下の白人小児の場合,100万人に8人程度の発生頻度です.小児悪性腫瘍全体として発生数は約10%程度ですが,死亡原因としては15%を占めています.平均診断時年齢は22カ月で,95%は10歳以下で診断されます.発生部位は, 副腎 (35%)が最も多く,続いて 後腹膜 (30〜35%), 後縦隔 (20%),頸部(1〜5%),骨盤(2%)となっています.

症状
痛みで発症することが多く,発生部位によって腹痛や胸痛が発生します.腫瘤による症状として,お腹が大きくなったりしこりをふれたりします.頸部腫瘍では,瞳孔が狭くなったり顔面の半分で発汗がなかったりします.全身症状として,不定の発熱,貧血,食欲不振,嘔吐,腹痛,下痢,やせ,高血圧などが見られます.転移巣による症状としては,眼球突出,眼窩周囲鬱血,骨・関節部の疼痛(四肢痛),跛行,肝腫大,皮下結節などがあります.また,日本では早期発見のため全ての赤ちゃんを対象として生後6ヶ月時に尿検査によるマススクリーニングが行われています.また,出生前に胎児超音波診断されることも希にあります.

腫瘍の特徴
この腫瘍の特徴は,悪性度が各々の腫瘍で極端に異なっていることで,一歳未満で見つかる腫瘍の多くはおとなしく,治りやすく,中には自然に消失してしまうこともありますが,一歳を過ぎて発見されるとたちの悪い,治りにくい腫瘍が増えてきます.おとなしいうちに早期に発見する目的のマススクリーニングでは,予想以上に多くの腫瘍が見つかっており,なおりやすい腫瘍ばかり見つかる傾向にあることがかえって問題視されています.
現在は,病気の進行度(病期),発生部位や組織分類(嶋田分類)に加え,腫瘍の性質を把握するためにはがん遺伝子(N-myc遺伝子など)の数の異常や染色体異常,神経の発達や細胞増殖に関わる 遺伝子 やその 受容体 の発現(Trk A, テロメラーゼなど)によって腫瘍の特徴を判定しています.

診断
交感神経節細胞に由来する腫瘍細胞のために,カテコールアミンという物質を産生する性質があり,9割以上の患者さんで尿中にVMA,HVAと呼ばれるカテコールアミン代謝産物がたくさん排泄されています.マススクリーニングではこの両者を測定しています.単純X線検査で,3割の患者さんで腫瘍の部位に淡い石灰化が認められます. 超音波検査 CT MRI は画像診断として有用で,骨転移巣の発見には,全身骨撮影や骨シンチが行われています.骨髄穿刺は,骨髄転移を調べるために行われます.

治療
早期に発見され腫瘍摘出が可能な場合は,腫瘍摘出術を行います.マススクリーニングで発見された場合は,条件を選んで無治療で自然経過を観察する方法も試されています.
根治手術ができない進行した腫瘍では,最初にまず腫瘍生検を行って,一部の腫瘍細胞をとりだし,組織検査や遺伝子検索を行って腫瘍の性状を調べて有効な治療法を選択しています.1985年に全国統一治療プロトコールが始まり,まず強力な多剤併用化学療法を行い腫瘍の縮小をはかり,可能であれば外科切除を行います.現在では, 造血幹細胞移植 を用いたさらに強力な化学療法も行われ,治癒率を向上させる努力がなされています.

治療の現状
年齢,病期,N-myc遺伝子の増幅がはっきりとした予後因子(治りやすいか,治りにくいかの指標)で,その他に組織学的予後因子やN-myc以外の遺伝子異常など,非常に細かく検討されています.良好な予後因子のみを保有する場合は,ほぼ100%に近い生存が得られますが,転移を伴い予後不良因子を多く保有する場合は,5年生存率は未だに50%をきっているのが現状です.

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