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国際協力と小児外科ーリサーチマインドをもったグローバルな小児外科医ー

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最近、発展途上国を訪問したり、その国の小児医療に関わる医師との交流の機会が増えてきて、ますます小児外科の重要性を再認識しています。いまそういった国は日本の太平洋戦争が終わったころの状態と似ているといわれます。出生率が高くこどもの人口が多く、妊婦や新生児や乳児の死亡率が高い状況です。それらの国の小児外科医療では、治療対象は外傷や熱傷や外表面の異常、それと小児科の日常診療でなんとか診断可能な虫垂炎や鼡径ヘルニアといったところで、内臓疾患はまだほとんど治療対象になっていません。

発展途上国で小児医療の克服していく順番は、1)感染症、2)新生児乳児医療、3)悪性腫瘍ということになります。われわれ小児外科医は小児を診れる外科医ですので、すべての領域で重宝されます。わたしたちの教室では私を含めて助教以上は福岡市急患センターで「小児1次救急医」としても勤務していますので、小児の1次救急すべてに対応できます。ここでは小児の日常疾患で最も多い「感染性胃腸炎」(いわゆる嘔吐下痢症)に頻回に出会いますが、そのなかに潜む外科的腹部救急疾患である「腸重積」「虫垂炎」「絞扼性イレウス」を見逃さない外科的動物的感覚と腹部超音波を聴診器がわりに使える技量をもった小児外科医が重宝されます。これらの疾患は診断がおくれて致死的や高度脳障害になり訴訟になっている事例が多々あり、小児救急の「地雷」とも呼ばれています。

発展途上国では新生児外科疾患は体の表面を見て診断がつく病気、つまり、鎖肛、臍帯ヘルニア、腹壁破裂、体表面の腫瘍、などが小児外科医のもとにたどりつきますが、内臓の病気である、食道閉鎖、横隔膜ヘルニア、腸閉鎖などは、ほとんど診断されず治療の土俵に上がっていません。日本の新生児外科の死亡率は日本小児外科学会が発足した50年前は60%でしたが、現在は10%に低下し、日本の新生児・乳児死亡率が世界一低いのに貢献しています。ここまで到達するには、周産期新生児医療・小児医療に関わる人たちへの病気に関する教育啓蒙が必要です。日本の若い小児外科医の海外進出が期待されます。

小児医療が進んでくると内臓疾患の診断がつくようになります。そうすると消化管疾患のヒルシュスプルング病、食道閉鎖、横隔膜ヘルニア、腸閉鎖、肝胆道系の胆道閉鎖や胆道拡張症、小児がんなどが治療の対象になってきて、ますます小児外科の専門医が必要です。

わたし自身の小児外科医のイメージとして、小児の頸部、胸部、腹部、泌尿器、生殖器の器質的疾患、小児消化器疾患全般の診断と治療をひろくカバーするグローバルなジェネラリストと位置付けています。そのなかでも、特に、新生児外科、小児の肝臓(小腸)移植、小児がんの外科治療は自分の専門分野と考えて感性を研ぎ澄ましてリサーチマインドを持ち続けております。また若者には知力では負けますので気力と体力だけは負けないように地道な努力を続けたいと思っています。患児にとって何が一番大切かを考えること、自分たちのやっていることに疑問を持ち続けること、他人の意見に耳を傾け情報収集することがリサーチマインドの原点です。

最近は歯髄幹細胞に無限の可能性をもとめ小児の難病治療に応用しようと生きのいい若手教室員を投入しています。また小児消化器の難病であるヒルシュスプルング病類縁疾患が社会的に認知していただけるように、厚労科研という「錦の御旗」で診断基準や治療指針の整備に着手しました。毎日がとても充実して時間がたつのが早すぎるのが悩みです。


田口 智章(たぐち・ともあき)