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小児外科医の喜び

 小児外科は小児の外科的疾患を取り扱う分野であるが,緊急手術を必要とする新生児疾患,乳幼児の固形小児癌や胆道閉鎖症などが,その特徴的な疾患として挙げられる.最近は胎児の外科,小児の肝移植等,その臨床分野は拡大しつつある.その手術を成功させるためには,手術手技の向上のみならず,周術期の管理,即ち呼吸,循環,栄養,感染等の基礎的研究が必要である.将来の日本を背負う健全な小児を育てるために,特に子供の好きな研究心に富んだ学生諸君が小児外科の道を歩かれんことを切望する次第である.
 私は約40年前日本の小児外科の夜明けの時代に小児外科医を志し,昭和39年に発足した日本小児外科学会に参加することができたが,当時経験した新生児,乳児の2例について,その後の経過も加えて申し述べたい.
 昭和39年9月に生後4ヶ月男児が腹部腫瘤を主訴として来院し,小児肝癌と診断され,450gの肝右葉切除を行った.日本で3例目の切除成功例であった.彼は成長して九大医療短大を卒業して放射線技師となり,結婚して2人の子供に恵まれ,39歳の現在某病院で活躍中である.結婚に際しては仲人をつとめさせていただいた.
 次は昭和40年2月に生後3日目の女児が嘔吐と腹部膨満を主訴として来院した.腸穿孔を伴った小腸閉鎖症と診断され,回腸切除・端々吻合を行い無事退院した.彼女は成長して某国立大学医学部を卒業し,結婚して2人の子供に恵まれている.38歳の現在,女医としてまたよき母親として活躍中である.私の最初の小腸閉鎖の成功例である.
 何れも最初の経験例で,手術前後の管理に苦労したが,全快した喜びは何物にも代え難い.私の九大小児外科勤務(昭和37年~63年)中に,外科的新生児疾患を570例(463例81%生存),固形小児癌を197例(110例57%生存)経験したが,最近は早期診断と治療法の進歩により,治療成績が更に向上しているのは喜ばしいことである.
 毎年新年には,成人に達したこれらの方々から年賀状を多数いただくが,“小児外科医の喜び”これに過ぎるものはない.

池田惠一 (いけだ・けいいち)

大正15年(1926)4月1日 生
昭和25年 九州大学医学部卒業 
昭和26年 九州大学第二外科入局
昭和36年 西ドイツ留学 小児外科を学ぶ ~37年
昭和54年 国立大学として最初の小児外科学講座が九大に開設され、初代教授に就任
昭和58年 第20回日本小児外科学会会長、第16回太平洋小児外科会議会長
昭和62年 九州大学附属病院長
平成元年 九州大学退官、福岡逓信病院院長 就任
平成6年 福岡逓信病院 退官