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小児外科をやってみなさい

 小児外科医をやめて1年になるが,来し方を振り返ってみて,心底,小児外科を続けてよかったと思う.
 何が良かったのかと問われれば,患者がこどもである事である.80歳のおじいさんの手術がうまくいっても,たかだかあと5年か10年の寿命である.こどもでは80年間の保証をするような手術をしなければならない.手術の緊張感から来る重圧と,うまくいった時の喜び.これらは外科医特有のものであるが,ストレスの大きさと術後の心地よい感情は,成人外科とは比べるべくもない.楽をして金もうけをしようと思う人は,このホームぺージを覗くなんてことはないだろうが,小児外科はこのような“嬉しいしんどさ”の学問である.小児外科のもうひとつの特徴は,首からお尻まで,なんでも手術することである.朝には気管の手術をして,午後は鎖肛の手術をするなど,今の時代には,他には見られないユニークな分野である.そのかわり多くの知識と技術が求められる.たえず勉強を続けなければならない.たとえば,肺切除なんて一施設ではたかだか年間に数例しかないであろう.でも,成人の呼吸器外科医と同じように,完璧な手術をしなければならない.小児外科をすれば,この“勉強する喜び”が一生の間体験できる.
 小児外科医になろうと思う諸君,卒業してからするべき方向を教えます.まず,実技を出来るだけ短期間に覚えなさい.皮膚の切開,糸の結び方,鉤の引き方,臓器の縫合など,成人の外科で数年勉強しなさい.外科医として最も大事な判断力はこの時にできるでしょう.大人の消化器外科,胸部外科を貪欲に吸収しなさい.こどもは大人のミニチュアではないと言うが,ある面ではミニチュアです.小児外科の研修では,短期間に多くの経験ができる病院を選びなさい.集中的に学ぶことほど大切な事はありません.それから,機会があれば外国へ行って,研究したり見学したりしなさい.日本人と違う考え方に感銘を受けるでしょう.
 もしも,君がまだ進路を決めていないのなら,騙されたと思って,小児外科をやってみなさい.

津川 力 (つがわ・ちから)

昭和43年 神戸大学医学部卒業、第二外科(現呼吸循環器外科)入局
昭和49年 兵庫県立こども病院外科レジデント
昭和53年 医学博士
平成 2年 兵庫県立こども病院外科部長
平成11年 神戸大学臨床教授
平成16年 兵庫県立こども病院手術担当部長
平成17年 兵庫県立こども病院退職
あさひ病院(明石市)勤務

日本小児外科学会指導医,認定医(1987)
日本小児外科学会理事(1999-2003),監事(2003-2005)
日本小児外科学会名誉会員(2006)
アジア小児外科学会(1984)
大平洋小児外科学会理事(1999-2001)
英国小児外科学会正会員(1981-2006)
ポーランド小児外科学会名誉会員(2003)