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33歳男性(卒後8年目)

研究の勧め

私の研究生活も3年目に突入し、成果の上がらない日々に焦りを感じながらも、手の抜けない実験行程を一つ一つ進めていく毎日を過ごしています。今回、小児外科を志す皆さんの将来選択の悩みに少しでも有益の情報になればと思い、私の現在のライフスタイルを紹介させていただきます。

みなさんは「研究」と聞いてどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。多くの方は、実験室に籠り、社交の場を絶たれ、黙々と実験をこなす暗いイメージをお持ちでないでしょうか。特に理系研究者となると、アメリカ映画で描かれるマッドサイエンティストのような行き過ぎたイメージがよぎるかもしれません。しかし、全くそのようなことはありません。研究生活といっても、当然のことながら研究だけを24時間やっているわけではありません。研究、家庭、そして時々臨床。この3つのバランスを取りながら過ごしています。

まずは研究ですが、当然生活の中心になります。時間が許す限り研究室で実験を行い、暇を見つけては論文を読みます。私の研究では、細胞や動物を使います。例えミクロレベルの小さな細胞とはいえ、生き物です。異なる刺激を与えることで、違った反応を見せますし、少しでも世話を怠るとたちまち死んでしまいます。一つの細胞でも無駄にしないように気を使って取扱い、動物の手術をした時には、患者さんと同じように、気になって朝早く見に行くこともあります。臨床ではヒトという大きな生命を対象としますが、研究ではミクロの世界から生命の不思議を感じ、探究心が湧いてきます。このようにミクロレベルで考えることは、臨床でも大いに役に立ちます。また、研究は興味本位で一人で黙々とやっていても成果が上がるわけではありません。諸先輩医師、技術者、他分野研究者、様々な方からご指導いただき、また毎日のように議論をして、ブラッシュアップしていきます。時には学会やセミナーに参加して、著名な先生方にお話しを伺ったり、他業種の方々と意見を交換し、知識・人脈が広がっていきます。このように医療とは異なる分野の人々と交流し、視野が広がっていくことは研究をすることの大きなメリットです。ですから、研究者=社交性がないというイメージは間違っています。良い研究者は皆さん、人柄も良いです。研究をしていくなかで、こんな重箱の隅をつつくようなことをして何の役に立つのだろうかと思うこともあります。しかし、医学とはエビデンスの積み重ねです。その些細なことが積み重なって新しい治療が生まれるかもしれませんし、時には大きなブレークスルーをおこして、現在の医療をがらりとかえるかもしれません。自分の研究が未来の医療を創り出し、多くの生命を救うことになると思うと、研究生活は希望に満ちたものになります。

研究の次は、プライベートがどうなのか気になるところだと思います。私には家庭がありますが、研究に追われて家庭をほったらかしにするわけにはいきません。しかし、心配は無用です。研究生活では、臨床のときのように急患が来て、予定外に時間がなくなることはありません。計画的にタイムスケジュールを組み立て、時間を作ることができます。ですので、実際に臨床の時より家族と過ごす時間を確保できています。プライベートの時間は、黙々と研究をする生活においては大事な息抜きです。また、経済面が気になると思いますが、こちらも心配はいりません。私は週に2日程市中病院で夜勤などのバイトをして、収入を得ています。ここで一つお話しておきたいのは、こういった場合、小児外科医は非常に重宝されます。なぜなら、小児外科医は小さな子供からお年寄りまで初療を診れますし、夜間の急患で多い外傷や重症患者の対応もお手の物だからです。小児外科は専門性が高い一方で、子供からお年寄りまで、いろいろな臓器を診れるジェネラリストとしての力が発揮されます。学会前などの忙しい時期には、研究とバイトで大変ですが、時間を有効に使うことで充実したプライベートが過ごせています。

最後に少し臨床の話です。研究をしながら、臨床にも携わるかは人それぞれですが、私の場合、専門とする手術や検査がある場合には、参加しています。夜勤のバイトを含め、臨床の感覚を忘れないように、少しだけ臨床にも携わるようにしています。

医学生や研修医の先生方には、研究は身近なものでなく、実態の見えないものでしょう。とりとめもなく、私の研究生活実態を書きましたが、小児外科に興味を持って下さった皆様に少しでも参考になれば幸いです。研究は臨床でのマクロの世界から、ミクロの世界に目を向け、小さなことの積み重ねによる論理的思考力を養うことができます。また、過去の研究成果を還元していく臨床の現場も楽しいですが、未来を創造する研究の現場は日進月歩で厳しい反面、とても刺激的です。