血管腫

 血管腫とは,皮膚,皮膚の下,その他皮膚以外の場所に,広がって太くなった血管が集まったり,それらが増えていく性格 を持った血管のできものです.一般的にこどもには生まれつき血管に奇形の性格を持つたちのいいものが多く,悪性のものは極めてまれです.しかし,これら血 管腫の症状や治療方法は病気の型によってみんな異なります.皮膚科や形成外科で治療するのがよいものから,小児科,小児外科,放射線科などの専門医が協力 して治療をする必要があるものまであります.
 血管腫には大きく2つのグループがあります.1つはあざのようなものです.これには正中母斑(額の 真ん中のものをサーモンパッチ,頸の後ろなどにできるものをウンナ母斑といいます),単純性血管腫,苺状血管腫があります.これらはほとんどが皮膚科や形 成外科でレーザー照射による治療が行われています.もう1つは,かたまりのできものとしてみられ,いろいろな合併症を引き起こすことがあるものです.海綿 状血管腫(図1)や血管内皮腫(図2)が代表的なものです.海綿状血管腫は,生まれた時から手足の皮膚の下のできものとしてみられることが多いですが,肝 臓にできることもあります.血管内皮腫は皮膚の下,耳下腺,肝臓にできやすいですが,自然に小さくなることもあります.最も危険なことは,これらの血管腫 によって急に血小板が少なくなって血が止まりにくくなることです.これをカサバッハ・メリット症候群といいます.この状態に陥ると血管腫自体を何とか治療しないと血小板はいつまでたっても元に戻りません.治療は(1)ステロイド(図3)という薬を投与したり,(2)血管を映す検査をして血管腫に入る血管を薬で詰めたり(塞栓術(図3)),場合によっては(3)インターフェロン(図3)という特殊な薬剤(ただしこれは保険適応がありません)を投与することもあります.また(4)放射線療法(図3)が劇的に効果を発揮することもあります.このような場合手術は極めて限られた場合しか行いません.一方,カサバッハ・メリット症候群に 陥っていない肝臓の血管内皮腫(図4)などは自然に縮小(図4)することがあるので,慎重に外来で経過をみますが,ときに心不全に陥って全身状態が悪くな ることもあります.また血小板が薬でコントロールできるときは手足の海綿状血管腫には間歇的圧迫療法(図5,6)も効果があります.

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図1.海綿状血管腫

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図2.耳下腺部に発症した血管内皮腫

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図3.カサバッハ・メリット症候群を合併した血管腫の治療法の選択

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図4

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図5.(出生直後)右下腿海綿状血管腫

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生後3ヶ月後の病変部
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生後6ヶ月後の病変部
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間歇的圧迫療法(4ヶ月~)
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生後9ヶ月後の病変部
図6

 血管腫はたちのいいものがほとんどですが,カサバッハ・メリット症候群に陥ると治療が困難です.治療経験が豊富な小児外科医や小児科医にまず相談されることをお勧めします.